要 望 書
環境省自然環境局
環境省那覇環境事務所(098-858-5825)
石垣自然保護官事務所(82-0279)
西表自然保護官事務所(85-5582) 殿
2012年4月5日
日本野鳥の会西表
支部長 衣斐 継一
電話(FAX)0980-85-5530
メール 223@offeco.com
カンムリワシ生息数(総数)調査の要望
「カンムリワシ一斉調査」が、本年3月に行われ、石垣島では天候に恵まれ、これまでの調査で最高の羽数が観察されました。しかし、現行の「カンムリワシ一斉調査」では天候によりカンムリワシの出現に大きな差があり、カンムリワシの総数や増減が推定できず、第1回より課題とされてきました。タンチョウやガン、カモ類のように冬季集団で限られた場所にいる鳥類と違い、カンムリワシは、繁殖行動を除き単独行動をするために、全体数の把握は非常に困難な訳です。現行の調査方法はカンムリワシの数よりむしろ、天候の指標と言えるものです。イベント的な予算執行が、果たして必要なのでしょうか?
石垣では佐野氏(カンムリワシリサーチ)によれば300〜400羽を維持していると推測されていますが、西表ではここ数年繁殖が順調でなく、300羽前後(衣斐予想)まで、減少していると見られます。2005年頃より度々大型台風の直撃を受け森林生態系が大きく破壊されたのが原因と思われ、カンムリワシの目撃数も半減し、より低地部に生息域が集中しつつあります。このまま繁殖が阻害され続ければ、親鳥の老齢化で極端に減少する可能性もあります。今回の調査結果からも両島で、各2羽の幼鳥しか確認されずそのことが明確になりました。過去の調査では、1982年85羽中20羽幼鳥、1985年93羽中13羽幼鳥(西表)と、いかに幼鳥が減少しているかが分かります。また、専門員の山崎亨(アジア猛禽ネットワーク)氏によれば、若干の交流はあるものの、西表と石垣では既にDNAレベルで変異があるとのことです。八重山亜種としては、直ちに絶滅の危機はないものの、それぞれの島の固有性は危機的な状況にある可能性が高いと考えられます。カンムリワシは産卵が1卵のため、一旦減少すると個体数の回復に年月もかかります。第2のトキとならないように早めの総数調査、保護が必要だと考えます。また、環境省が南西諸島の世界遺産登録を目指すのであれば、絶滅危惧種(IA類)のカンムリワシの総数の把握は、必須条件だと私達は考えます。
このような理由から、石垣、西表で、徹底したカンムリワシの生態、生息数(総数)調査をし、モニタリングサイトを決め継続的に個体数の推移を把握すべきであると考えます。また、今回のような一斉調査で総数が推定できる指数(天候と生息数の関数)も合わせて調査することを強く要望します。
また、今回の一斉調査に当たり、調査の主体である一般住民が検討委員に加われず、交通費の支給もないなど予算執行にも問題があります。更に、開始時間を8時に限定したために石垣からの調査員の補充が十分にできないなど、調査方法に改善の余地は多く残されています。今後の対応をお願いします。