世界自然遺産推薦地の
西表島の適正利用とエコツーリズム推進体制構築に対する意見書
関係各位
2017年12月21日
〒907-1433 沖縄県八重山郡竹富町南風見仲29−74
日本野鳥の会西表支部
http://www.offeco.com/iriomotesibu.html
西表の海亀を守る会
http://blue.zero.jp/umigame/
代表 衣斐 継一
電話(FAX)0980−85−5530
11月29日の検討会は、事務局側から議長指名があり、設置要綱の議論も採決も行われず、
議長は事務局に忖度し、私見が多く、有識者から問題点が出されても、議論もされず、時間の
制限から終わりました。12月にはエリヤ代表と事務局との話し合いで「ガイドライン(素案)」を
作成するとの予定が発表されましたが、これはまるで「官製談合」そのものではないかと考えます。
一部業者と行政の談合によるエコツーリズムが公明正大なものになるとは考えられません。
沖縄県の保全利用協定ではモニタリングのフィードバックも十分にできていません。
批判的意見を排除し行政主導で、このままトップダウンで事業が進めば「官製談合型エコツー
リズム推進事業」と命名したくなります。業者との談合で、国民の財産である自然環境を劣化
させるのであれば、「環境官製談合防止法」が必要になります。少数意見を排除するような
行為は自然保護にも科学的協議にも反する行為であると考えます。環境省の推進してきた
エコツーリズムはこれで良いのでしょうか?検討会の位置づけさえ無視することが、
世界遺産地域として適切なのでしょうか?
西表島の自然環境は、自然の生態系の底辺である物理的面積が狭いことで、極度に脆弱で、
離島ゆえ残された地球上唯一無二の貴重な自然環境です。どのエリヤであっても地球上、
他に代わる生態系が存在せず、生物多様性条約上の遺伝子の多様性を維持する上でも保全が
必要です。生態系の頂点に位置するイリオモテヤマネコやカンムリワシを保護するにはこの
生態系を丸ごと保全する必要があります。イリオモテヤマネコは生息数の減少や交通事故死の
増加により最も絶滅の危機にある動物です。イリオモテヤマネコの現状から考えると、適正
入域量は0が理想です。どこまで入域数を削減できるかが課題です。環境重視の基本理念を
持って事業計画を策定すべきであると考えます。すなわち、今の西表島の生態系の現状では、
エコツーリズム以上に環境に配慮する必要があり、世界自然遺産で科せられる自然環境の保全
レベルだと私たちは考えます。IUCN委員からも入域規制の必要性が指摘されている中、余りにも
性急で、モニタリングの手法、還元(フィードバック)の機構も確立されてなく、西表の自然が保全
できるとは到底考えられません。法令の遵守もカヌー組合の自主ルールのように厳しく監視する
必要があります。
検討会は住民参加型で、環境重視の専門家や自然保護団体の検討委員を増員し、総合的、
科学的、客観的な議論を尽くし世界自然遺産として恥ずかしくない環境保全レベルを達成すべき
だと考えます。
入域規制は総量規制が必須です。ホームページを制作管理し、各フィールド、コース毎の
入域数を厳格に管理する以外に方法がないと考えます。また、不正な取引の防止を徹底すると
共に繁忙期の申し込みは抽選制にすることが望ましいと考えます。ホームページではガイド認定
されたガイドとセットでの申し込みが最良の方法だと考えます。そのため、フィールド毎のガイド
認定制度や育成をする必要があります。さらに、陸域でのカヌー提供は各フィールド毎にリース
制とし、管理組合などを作り現場での2重の入域管理をし、カヌー搬送の交通量削減や駐車場の
占有の軽減を図るべきだと考えます。浦内川に見られるように、借地許可業者が多数のカヌーを
置き自然景観を乱すようなことも防げます。(適正な場所での管理が必要です)
まずは、複数のガイドを保有する業者の前年度より入域量を増やさないこと(自主規制)から、
今すぐ取り掛かるべきだと考えます。
また、入域削減だけではイリオモテヤマネコの減少を食い止めることは不可能だと考えます。
開発(農地再生事業、大型ホテルを含む)、赤土汚染、農薬汚染、下水、取水、地球温暖化など
が、より環境負荷が大きいことから、これらに重点的に取り組み、並行して実行して初めて自然
環境が遺産として維持され守られると考えます。さらに、漂着ごみの責任ある処理。そして、
竹富町自然保護条例の再改正が必須です。(昆虫採集〔佐々木委員からの意見もありました〕、
魚類、甲殻類、植物収集などの規制)
また、林野庁職員が履くスパイク付きの靴も環境破壊になっています。いい加減に止めて
下さい。世界遺産地域で足跡を残さないで下さい。
課題であるオーバーユースは環境面だけでなく、インフラ面でも顕著な状況にあります。
また、事務局ではエコツーリズム推進法で、入域規制を図ろうとしていますが、そもそも西表の
自然環境が観光資源(「特定自然観光資源」)というとらえ方が、生物多様性条約の生態系の
保護に当たらないと考えます。そして、具体的にどのような方法で規制するのかお示しください。
また、エリアが多く全てを指定することは非効率的で、一括して制限できる、特別立法が必要だと
考えます。管理体制も整備する必要があります。スピード違反さえ取り締まれないこの島では、
法令の整備だけでは生態系は守れないと考えます。
1.意見、問題点の公開と共有
日本野鳥の会西表支部の要望書(2017.1.18.付け、2017.5.31.付け)を共有すること
A.ガイドラインの試行期間の設定がなく非常に危険な条例になる可能性がある。
業者対応として、段階的に入域規制を行う必要があり、その期間が全く考慮されていない。
協議の回数が少なく、十分に入域規制が行われないか、不公平が生じる可能性が大きい。
B.フィールド毎の適正なガイドライン制定のためには現場の環境調査とモニタリングが
必要あり、余りにも性急で稚拙である。
(仲間川でのモニタリングは還元されていない〔渡辺氏も指摘〕)
C.ガイド登録の前にガイド認定制度を確立し、無駄なガイド登録をすべきでない。
イ.入域規制が必要だから、不適切なガイドや事業者を最初から排除すべきである。
過度なネット上の広告(バーナー広告などは)は、オーバーユースを助長するものです。
このような業者は、エコツーリズム業者として認定すべきではないと考えます。
モニタリングをガイドが担うのであれば尚更、認定を適正に行うべきである。
ロ.ガイド認定は@業種別基本技量Aフィールド毎ルールB分野別(植物、恒温動物、
魚類、昆虫など)技量検定を設け、複数の分野で等級も分け認定することが望ましい。
島内在住期間(例えば3年)を加味すべきである。
3.検討会は住民参加型にし、委員に専門家、自然保護団体、弁護士を増員すべきである。
4.フィールド毎の具体的入域規制数
A. 動力船の入域規制
動力船による入域は、@騒音A濁度B引き波などの自然景観や環境破壊があり、大幅に
削減すべきだと考えます。当面の目標値を決め段階的に削減を図るべきだと考えます。
当会では要望書により、10分の1を示しています。カヌーなどの手漕ぎタイプの舟は
環境負荷は小さく、マングローブ林内への立ち入り制限などにより、代替とし、動力船の
削減を実施すべきだと考えます。
また、現行の仲間川、浦内川のガイドラインは動力船業者優先のガイドラインであり、弱者
保護のガイドラインを制定すべきだと考えます。
また、仲間川エリヤ代表より2018年10月より全航路徐行が決定されたとのことですが、
1年間環境破壊を続ける契約が継続されるとしたら、余り意味の無い保全利用協定と
言えるのではないでしょうか?契約の見直しもすべきです。
B. フィールド毎の入域規制(総量規制)
イ.推薦地域、緩衝地域は全て、1ツアーの上限客数を5人とすべきである。
海域も安全上同数とすることが望ましいと考えます。
ロ.ユツンから古見岳、アイラに至る、登山道と横断道は当面、1日10人、1ヶ月100人、
1年間200人を上限とすべきです。
ハ.ヒナイ地域は基本的にカヌー組合(略称)に委ねるべきだが、半日コースの人数も1日の
人数とし、半日コースの人数を削減し、当面、1業者1日10人(レンタルを含む)、
総入域数は当面最大100名を目標とし、近い将来の総量規制に向けスリム化を
図るべきです。
ニ.仲間川、浦内川は動力船からの移行期間を考慮し、カヌーなどの人力タイプは、
1日100名を上限とするべきです。
ホ.その他地域での入域削減はフィールド毎、1日20人、年間1000人を当面の目標にし
段階的に縮小すべきである。
ヘ.海亀の産卵する浜(トドゥマリ、ミミキリ、星砂、中野、赤離れ、南風見田、ボラ、ナイヌの浜
など)への夜間(産卵期の5月から10月の日没後1時間後から夜明けまで)の
ナイトツアーを禁止すべきです。
5.総括
本事業は実質的な環境保全のシステム構築が見えてきません。ガイド認定、モニタリング
体制(できれば第三者機関)の構築、ガイドラインの協議、認定し、段階的に入域規制
(自主規制)を実施し、ガイドライン試行期間(ホームページなどの試行期間も含む)、
管理体制の構築、そして、法令の制定をすべきだと考えます。
どう、公明正大に段階的に入域を削減していくかが課題です。
日帰り観光の削減は、画期的な入域規制になります。具体的な検討をすべきだと考えます。
例えば石垣に博物館や水族館が建設予定なので、そちらに観光客を誘導するなどが
考えられます。
一般住民、旅行者、研究者、教育目的の入域も、ルールの策定が必要だと考えます。
狩猟による入域、狩猟頭数も個体数を把握して管理していく必要があると考えます。
マスツーリズム(団体旅行)対策として、大原港埋め立て地にミュージアムを建設し大原川に
木道を設け団体客を受け入れるべきだと思います。そのためには、技術を尽くし赤土流失を
防ぎ、製糖工場の汚水を完璧に浄化する必要があります。自生してないニッパヤシやヒルギ
ダマシの植栽をし、博物館や水族館、カンムリワシ保護センター、などの付帯施設を建て
対応すべきです。
また、ガイド育成や情報交換の場として「自然情報センター」(仮称)を設置し島内の動植物
図鑑や資料を網羅した施設も必要だと考えます。
現状で世界自然遺産に登録されれば一気に入域数が増加し、環境負荷と混乱が起こる
ことは必至であり、イリオモテヤマネコに影響が出ることは自明の事実です。確実に
環境対策が実行されるまで、世界遺産申請は一端取り下げるべきです。
これまでの環境対策で余り効果が出なかった理由に、検討評価が関わった、事業者、
専門家、行政が行うため批判的な意見が出されないためだと考えます。会計検査院のように
第3者による検証がこれからの環境行政に必要不可欠だと考えます。すなわち、「環境行政
審査院」や「環境裁判所」設置が時代の流れとして、必要だと考えます。産業振興、景気浮揚
がテーマの行政府では実現は困難かも知れませんが、地球温暖化防止の意味でも必要だと
考えます。
以上